ひてん・はごろも

ひてん画像

冒頭でも少し触れましたが、「かぐや」は日本初の 本格的な 月探査衛星でありますが、 日本初の 月周回衛星(Lunar orbiter)では断じてありません。 この事は何度書いても書き足りないくらいなので、ここで改めて書き記させて頂きます。

概要

「ひてん」はコード名を「MUSES-A」(MU Space Engeneering Satelite)と云い、 宇宙探査の為に必要な技術の修得を目的とした工学実験衛星です。 1990(平成2)年1月24日、M-3SIIロケット5号機により打ち上げられました。 孫衛星「ほごろも」の投入、月二重スウィングバイ他の各種の実験を行なった後の1992(平成4)年2月15日、 自らも月周回軌道に投入され、 1993(平成5)年4月11日に月表面に「硬着陸」(Hard Landing)、 我が国に米ソに次ぎ3番目に月に人工物を到達させた国という栄誉を齎しました。

即ち、「かぐや」は無事月周回軌道に投入されれば我が国にとって3番目 の月周回衛星となるのです。 単に「月へ行った」と言う事であれば、「GEOTAIL」も月をフライ・バイしていますのでその様に強弁出来なくも無いでしょう・・・流石にみっともないのでそれはしませんが・・・ それにしても、NSSDC の月探査のページ(http://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/planets/moonpage.html)には、 Galileo や AsiaSat3(HGS-1)迄載ってるんですから、それなら「GEOTAIL」「はやぶさ」(月の裏側の画像を撮影しています)も入っていても良さそうな物ですけどね。

工学実験

「ひてん」の実施した主な実験は以下の様な物でした。

●「スウィング・バイ」技術の修得
「スウィング・バイ」は月や地球、その他の天体の重力を利用し、少ないエネルギーで機体の軌道変更を行なう、殊に惑星探査では欠かせない技術です。 次に控える日米共同ミッション「GEOTAIL」(和名:磁尻停留)の為に必要な二重月スウィング・バイの技術を確立する事が「ひてん」の主要な目的でした。 「ひてん」は合計10回のスウィング・バイを実施、 遠地点高度は最大135万kmに迄達しました。
●孫衛星を月周回軌道へ投入
「ひてん」の第1回月接近時(3/19)、孫衛星を月周回軌道に投入。 搭載装置の不具合によりテレメトリによるキック(レトロ)モータ点火確認が出来無くなりましたが、 東京大学木曽観測所の協力を得て地上からの観測によりロケットモータの点火を確認、 孫衛星は月周回軌道に乗ったであろう事が推定され、 これにより孫衛星は「はごろも」と名付けられました。
●地球大気によるエアロブレーキング実験
スウィング・バイ実験の後、1991(平成3)年3月19日及び 3月30日には2度の地球大気によるエアロブレーキング実験が実施されました。 1回目の実験では太平洋上空の高度125kmの大気層を11.0km/sで通過、 これにより遠地点高度を8,665 km、速度を1.712m/s程度下げる事に成功。 2回目の実験では遠地点高度を14,000km、速度を2.8 m/s程度迄それぞれ下げる事に成功し、 机上の構想であった惑星大気によるエアロブレーキングを世界で初めて実証して見せました。
●地球・月空間の宇宙塵の計測
ミュンヘン工科大学との共同実験。 地球―月系空間の微小宇宙塵を調査、計測する為のダストカウンター(MDC)を搭載していました。

この他に3つの追加ミッション

  • 地球―月系のラグランジュ点、L4及びL5の宇宙塵の測定
  • 「ひてん」の月周回軌道への投入
  • 「ひてん」の月面への硬着陸(Hard landing)

が実施された他、 本来の計測機器ではありませんが、光学航行装置によって月面の画像が撮影されています。 因みに、スピン安定型衛星への光学航行装置の搭載は世界初との事です。

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